米国リーマンショック対策、トランプショックの現在
■2013年12月=FRB、出口戦略=米国FRBは13年12月18日、12年9月から実施してきた量的緩和(月額850億㌦)を縮小する出口戦略として、①14年1月から証券と国債購入を月額100億㌦減額し750億㌦する。②その後の減額は雇用などのデータで判断する。失業率が6.5%を下回ってもゼロ金利政策は当面継続する)を打ち出した。
■2014年10月=量的緩和拡大を終了=FRBは10月で、2008年末以降の量的緩和(QE)の拡大を終えた。▽FRBが今回決めたのは「増量の停止」(実質的なゼロ金利など超緩和的な政策は続ける)。証券購入を通じてGDP(約16兆ドル)の3割(4.5兆㌦)に膨らんだFRB資産を減らすのは、さらに先となる。
■2015年12月=FRB、9年半ぶりに利上げ=FRBは15年12月16日のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0~0.25%から0.25~0.50%に引き上げた。利上げは9年半ぶり。08年末から続くゼロ金利政策を解除した。
■2016年12月=FRB、1年ぶりに利上げ=FRBは12月14日、FOMCで、フェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を0.50~0.75%に0.25%引き上げを決めた。利上げは15年12月以来1年ぶり。来年の利上げは3回を見込んだ。FOMC参加者によるFF金利の見通しは17年末が1.375%、18年末が2.125%とした。0.25%とすると17年に3回、18年は3回の利上げを見込んだことになる。▽イエレン議長はFOMC後の記者会見で「ほんの緩やかな調整にすぎない」と表明しながらも、トランプ次期米大統領の政策に応じ利上げシナリオを修正していく可能性を示唆した。
■2017年2月(2月15日・日経)=FRB議長は2月14日、米上院銀行委員会で証言し、追加利上げは「今後数回の会合で判断する」と述べた。FRBは17年には年3回の引き締めを想定。3月14~15日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、5月初旬、6月中旬にも会合がある。発言は3月の次回会合も排除せず、6月までの会合で追加利上げする考えを示唆したもの。「利上げを先延ばししすぎるのは賢明ではない」とも強調。FRBは労働市場が完全雇用に近づいたとみており、大型の景気刺激策を打てば、想定以上のインフレ圧力をもたらす可能性があると懸念している。
トランポノミクス(不確実な政治・経済の行方)
■大統領議会演説(3月1日・日経) 議会演説の骨子
一、不法移民規制や国境の管理強化。メキシコ国境への壁建設に近く着手
一、海外からのテロリスト流入を阻止
一、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱
一、過激派組織「イスラム国」(IS)撲滅でイスラム諸国を含む同盟国と協力
一、法人税率を下げ、中間層向けに大規模な減税を実施
一、1兆ドルのインフラ投資を議会に求める
一、オバマケア(医療保険改革)の撤廃と代替策を議会に求める
一、米軍を再建し、国防費を大幅に増額する
一、北大西洋条約機構(NATO)を強く支持
一、同盟諸国に公平なコスト負担を期待
■解説(3月1日・日経)=選挙中、連邦法人税率を35%からの15%引き下げを主張してきた。税制は米議会の専権事項で、減税構想は上下両院で与党・共和党の議会指導部と連携が欠かせない。
▼共和党指導部は連邦法人税率を20%に下げるとともに、輸出を免税する一方で輸入品には20%を課税する「法人税の国境調整」を盛り込んだ独自の税制改革案を既に公表している。トランプは「国境調整」に一定の理解をみせたとの受け止めもあり、議会との調整が焦点。
▼「1兆㌦のインフラ投資」。選挙前の公約は大型インフラ投資で2500万人の雇用を生み出し、2%程度の経済成長率を4%まで高めると主張。減税とインフラ投資は、トランプ政権の経済成長策の二本柱だ。▼課題は財源だ。野党・民主党は企業優遇につながる法人減税ではなく、教育無償化や低所得層の社会保障の拡充などを求めており、米議会は一枚岩ではない。
▼下院議長や財務長官は今夏をメドに税制改革関連法を成立させたい考えを表明しているが、調整が難航して来年にずれ込むとの見方も残っている。